肩人工関節、人工関節、50肩、腱板断裂、反復性肩関節脱臼、野球肩、スポーツ障害肩、肩の痛み、肩の病気、整形外科医「森大祐(もりだいすけ)」のWebSiteです。

肩の病気

HOME | 肩の病気 | 野球肩に対する手術療法のトレンド

野球肩に対する手術療法のトレンド


近年の野球肩への取り組み、手術療法のトレンドは変貌しつつあります。

 
特にアメリカスポーツ医学会では野球肩の代表的疾患の関節唇損傷に対して従来の関節唇修復術でなく上腕二頭筋腱固定術を推奨されてきました。
私も「肩の病気」「上腕二頭筋腱損傷」上腕二頭筋腱固定術の利点をお伝えしています。

Franzという医師はThe American Journal of Sports Medicineといい雑誌で
・上腕二頭筋腱固定術は有効で、とくにレクリエーションの方に推奨しています。

 
Watermanという医師は2023年にArthroscopyという雑誌で
・オーバーヘッドアスリート(野球やバレー、アメリカンフットボール)で81%が平均4.1カ月で元のレベルに復帰したという報告をしています。

 

野球肩の病態は複雑です。

 
腱板不全断裂関節唇損傷不安定症などまねき病態は複雑です。
スポーツ界でも障害をかかえた肩と肘では手術成功率に対しては肘の方が高く、信頼度も肘手術のほうが高いのは事実です。
先人の医師が肘手術に対してたしかなエビデンスとトップアスリートに対して復帰を確かなものにしているからです。
 
ご存じのようにロサンジェルスドジャースの大谷翔平選手や阪神タイガースの才木浩人投手の結果が説得力と高めています。
一方、野球肩は、とくに投手は復帰率が高くない、パフォーマンスは下がると言われています。手術は肩はやめとけ、復帰は無理だからと言われる指導者や経験者がおられるのも事実です。

 
野球肩で保存療法(運動療法、PRP療法)を試みても満足した投球ができないで悩む方が多くいらっしゃると思います。
野球肩に対して上腕二頭筋腱固定術が絶対有効と言っているのではありません。
野球肩に対して上腕二頭筋腱固定術が有効という報告がアメリカでは増えてきていることゆえに、日本の方にもこの手術の存在を知っていただきたいと思います。

 

参考文献

1)Biceps Tenodesis for Superior Labrum Anterior-Posterior Tear in the Overhead Athlete: A Systematic Review.Frantz TL, Shacklett AG, Martin AS, Barlow JD, Jones GL, Neviaser AS, Cvetanovich GL.Am J Sports Med. 2021 Feb;49(2):522-528. doi: 10.1177/0363546520921177. Epub 2020 Jun 24. PMID: 32579853
 
2)High Rate of Return to Sporting Activity Among Overhead Athletes With Subpectoral Biceps Tenodesis for Type II SLAP Tear.Waterman BR, Newgren J, Richardson C, Romeo AA.Arthroscopy. 2023 Jan;39(1):11-16. doi: 10.1016/j.arthro.2022.07.017. Epub 2022 Aug 18. PMID: 35987458