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陳旧性肩鎖関節脱臼とは


陳旧性肩鎖関節脱臼とは,肩鎖関節脱臼を生じてから整復がされずに脱臼してる状態をさします。
 

はじめに

 
 肩鎖関節脱臼は治療方針が病院の医師により、まちまちであります。この治療方針がまちまちである最大の原因が肩鎖関節脱臼をおこして、肩鎖関節の脱臼状態が続いても症状がなく、生活、スポーツの困らない患者さんが結構な数でおられることです。整形外科の医師もこの事を熟知しているために肩鎖関節脱臼に対して保存療法(手術をしない加療)を施す施設が多くあります。しかし、中には肩鎖関節脱臼した箇所の痛みが持続する患者さんが結構おられます。そのように他院で保存療法をほどこされて痛みが残る患者さんに対して新たに考案した手術療法を施行しています。
 
当院にこられた、陳旧性肩鎖関節脱臼と診断された患者さまがどうして来院されたか、インタビューをしています。ご本人の同意を得ていますが音声は変更しております。
 

 

手術方法

 
イラストの1は肩鎖関節脱臼をおこした関節をしめしています。陳旧性肩鎖関節脱臼では、脱臼をして経過がながいために、イラスト2のような急性期の肩鎖関節脱臼に対する手術をしても烏口鎖骨靭帯は治癒しません。肩鎖関節脱臼の手術が成功する(脱臼が整復され、痛みもなくなり、筋力も回復する)ためには烏口鎖骨靭帯が不可欠になります。陳旧性肩鎖関節脱臼では、烏口鎖骨靭帯のかわりに膝から採取した半腱様筋腱を烏口突起と鎖骨にとおし(イラスト3参照)、鎖骨にあけた穴をスクリューで固定します。この半腱様筋腱が烏口突起と鎖骨に癒合するまでは、肩鎖関節を整復するために金属ボタン2つと強い糸で固定をします。さらに長い半腱様筋腱を肩峰に固定します。(イラスト4参照)
 

 
イラスト1

 

 
イラスト2
 
イラスト3
 
イラスト4

 

結果

 
脱臼整復が維持され、柔道に復帰した方もおられます。可動域の回復に時間がかかりますが、痛みが軽快し、患者さんは喜んでおられます。
 

レントゲン画像

 
我々は、
『陳旧性肩鎖関節脱臼に対する半腱様筋腱を用いた烏口鎖骨靱帯再建術の治療成績』というタイトルで別冊整形外科1巻77号でこの成績を公表しております。
https://webview.isho.jp/journal/detail/abs/10.15106/j_besei77_46
 

合併症、危険性

 
鎖骨、烏口突起骨折
再脱臼
感染
 

まとめ

 
1.陳旧性肩鎖関節脱臼(肩鎖関節脱臼を生じてから数か月以上脱臼状態である病態)で、肩の痛みが続くかたに対して有効な手術があります。
2.その手術の概要は膝の腱を採取し、それを鎖骨と烏口突起間に固定し、金属ボタンも使用することであり、肩の痛みを取り除くことが可能です。