非外傷性肩関節不安定症
発症機転
転んで手をついたり、肩を激しくぶつけたというエピソードを訴えられません。
よくある職業、性別
- 10歳台半ば以降から40歳台の女性に多い
- よく上肢をつかう(保育士、介護士など)、上肢をつかうスポーツ(バレーなど)をしていた
主要な症状
- 肩が抜けそうな感じがする、嫌な感じがあり,怖くて腕を挙げられない
- 脱臼した瞬間に強い痛みが生じ、音がすることもある
- 肩の形状に左右差が生じることもある
- 痛みにより手を挙げられなくなる
- 肩ががくがくなる
典型的な様子を下の動画にお示しします。
下の動画をみてください。腕をスムースにあげられません。あげると肩ががくがくいうと言われます。上腕骨が不安定になっています。腕をあげているうちに肩が亜脱臼しては、おさまったりの繰り返しをしならが、腕をあげているような状態であります。
肩がどのようになっているか
非外傷性肩関節症の方の病態は、関節窩という上腕骨の受け皿につく靭帯がはがれる関節唇損傷が軽微にあります。普段の肩は靭帯が緊張して,肩が受け皿からこぼれおちない(脱臼しない)ように働きますが、関節唇損傷が生じると靭帯は緊張しなくなります。靭帯が緊張しなくなると、肩関節が安定しないために、がくがくするようになります。それにともない、痛みも生じることもあります。
注意点:このイラストは反復性肩関節脱臼のイラストを引用しています。関節唇損傷の程度をわかりやすくお示しするために引用しました。しかし、損傷の程度は1cmくらいということはよくあります。また、損傷部位は関節唇でもいろいろな場所にあります。
そこで再度イラストをお示しします。
上図の青丸のところはよくおこる場所であります。この青丸のところが、上の図のようなバンカート損傷と同じような感じでおこります。前方におこる関節唇損傷と後方の関節唇損傷になります。バンカート損傷ほど程度がひどいわけではありません。したがって肩の脱臼、亜脱臼がなんどもおこるような症状にはなりません。
診断:理学所見
画像は造影MRIという検査を行い、診断をつけます。肩関節の中に造影剤のはいった生理食塩水を注入し、MRI撮影をおこないます。下の図)の青丸は造影剤の取り込み、損傷部位には造影剤がこぼれおちます。関節唇は関節窩というところにぴっちりついています。もし、はがれているとそこに水が流れ落ちます。MRIでわかりやすくするために造影剤をまぜておきます。
治療
- 手術が受けられない事情のある方には脱臼予防装具を処方して装着する。脱臼しない肩の位置を指導していきます。しかし、絶対的な治療とは言い難いです。
- 運動療法を処方して脱臼をしない肩の位置を認識してもらいます。肩周囲の筋肉の強化はもちろんですが、体幹の強化を施し,全身の機能を高めます。
手術
鏡視下関節唇修復術、脱臼制動術が行われます。
手術は関節唇損傷を治すのが目的です。
注意点:手術の内容はコンセプトは関節唇損傷と同様です。
『糸つきのビスを関節窩という骨にうちこみ、骨を関節唇靭帯複合体に装着して、その糸を縫い合わすということです。』
関節鏡写真をお示しします。
まとめ
非常に診断がむずかしいです。
手術までしなくては、症状が改善できないこともあります。しかし、手術をしても再発する、生来の靭帯の緩さから、負荷がかかりまた肩の靭帯がゆるくなることもあります。よく担当医の先生とメリット、デメリットをお話されることをおすすめします。
肩の病気
様々な肩の病気を解説しています。自分がどの病気に該当するかおおまかな目安にしていただければと思います。