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上腕二頭筋腱損傷


<レントゲンやMRIで特に異常がないと言われたのに肩の痛みが続く方のために>
<肩腱板断裂でもないのに痛みが続いている方のために>

 
この損傷が主な原因と診断するのは非常に難しいですが私がこの【上腕二頭筋腱損傷が主な原因】で肩の痛みを自覚されている方の臨床症状、診断方法などをご説明します。
 

上腕二頭筋腱長頭腱が損傷

 
上図の上腕二頭筋腱長頭腱が損傷し、腕を特定の方向に動かすと肩の痛みが生じます。
 

発症機転

転んで手をついたり、肩を激しくぶつけた、車を運転している際に後部座席の荷物をとる際に手を伸ばしたというエピソードがあります。
 

主要な症状

  • 痛みにより手を挙げられなくなるが、ぜんぜんあがらないわけではない
  • 肩前方部の痛み
  • 腕を後ろにまわした際の痛み
  • 腕を反対の肩にまわそうとして反対の肩にふれようとする際の痛み

 

肩がどのようになっているか

 
 

肩がどのようになっているか

 

診断:

 
MRIなどおこないますが診断はむずかしいです。MRIでは水腫がたまる像がよくみられることがありますが疼痛があまりない方もたくさんおられます。

  • 肩前方部の痛み
  • 腕を後ろにまわした際の痛み
  • 腕を反対の肩にまわそうとして反対の肩にふれようとする際の痛み

上記三つのどれかがある、MRIや超音波エコーで炎症がある、肩前方部の圧痛などがあるかで診断します。
 

治療:

 
エコー下の注射をおこないます。
動画でお示しします
 

 

手術:

 
下の図のような上腕二頭筋腱を、関節内の腱は一部切離して、長頭腱スクリューで上腕骨に上腕二頭筋腱の残った腱を上腕骨に固着します。
 

手術

投球障害肩への上腕二頭筋腱固定術

投球障害肩も上腕二頭筋腱が損傷することが結構あります。そして上腕二頭筋腱関節唇複合体は、関節唇損傷がある野球肩ではよく損傷しています。そのような肩にも固定術は効果があります。
アメリカでは最近はこのSubpectoral tenodesisが好まれます。
 

画像1

 
投球障害肩は関節唇損傷をよく伴います。
そして今まで関節唇修復術がよくおこなわれていました。
 

画像2


しかし、関節唇修復だけでは症状がとりきれない、または再手術が必要となる場合もあるという報告があります。

•DOI : 10.1177/03635465211039822
この報告は関節唇修復と上腕二頭筋腱固定術はまだ同程度の成績であるという結論です。
•DOI : 10.1177/23259671221074732
 
この報告は関節唇修復と上腕二頭筋腱固定術で8割以上の方がスポーツ復帰していると。復帰に成功した方はスポーツ復帰後、パフォーマンスはおちていないと報告。
 

森大祐のおすすめ

 
・上腕二頭筋損傷と考えられる臨床症状、関節唇損傷を合併する投球障害肩で保存療法に抵抗する方は
Subpectoral tenodesisの術式をおすすめし、同意された方はこの術式をおこなっています。
この手術をおすすめする理由は以下になります


画像3


上腕二頭筋関節唇複合体が損傷していることが多くて関節唇修復をしてもこの上腕二頭筋関節唇複合体修復がうまくいかないことがありうる。その場合には上腕二頭筋関節唇複合体損傷がおこる。その損傷が疼痛をひきおこす。
しかし、論より証拠です。
上腕二頭筋腱損傷、関節唇損傷に対してこの上腕二頭筋腱固定術を施行した方の術後
6か月での試合での投球の様子をお伝えします。女子野球の捕手で手術前まで投球はセカンドまでなげれませんでした。
 
 


 

いかがでしょうか。
投球障害肩で保存療法で抵抗する方、関節唇修復術をうけても治ったと感じられない方に、こういう手術があるということをぜひ知っておいてください。